●新型コロナウイルス感染症の事業への影響と対応について

(2020年7月31日現在)

■カンボジアの現状

感染者の報告が少ないカンボジアの状況がよいのかといえば、そうとも言えません。カンボジアの経済は、観光業に大きく依存しているため、外国人の入国禁止措置などの政府の対応は遅く、なおかつ緩いものでした。しかし早い時期に隣国であるベトナムとタイが実質上の鎖国措置を取り、人とモノの流通を止めたため、結果的にカンボジア国内では新型コロナウイルス感染症(以下:コロナ)の拡散防止ができているかのように見えます。実際はPCR検査は限られた病院でしか受けることができず、現地住民に対する隔離施設の準備もありません。 現地団体KCDが支援しているカンダール州プレックチュレイ地区は、毎年雨季に水没する地域的な特徴から清潔な水の確保が困難で、トイレや手洗いなどの予防医学的知識の普及も不十分でした。そのため公衆衛生上の問題点が多々あり、感染症が多い地域であることから、現地団体が重点的に衛生学的知識の普及活動を行っている最中でした。 現在この地域は、鎖国化しているベトナムとの国境に接し、都市部からも遠いため、物流が滞っています。出稼ぎに行くことが難しくなり、収入が減少し経済的に困難な状況にある家庭が増えてきています。医療制度が脆弱なカンボジアのような国で、特に対象地域のような農村でコロナに感染したら、おそらく病院へ行くことも叶わないでしょう。村人たちはニュースで流れる世界中に広がるコロナに対して恐れています。 また子どもたちにとって教育への影響は非常に大きいものがあります。学校が一斉休校のため、子どもたちの学業にも遅れがでています。子どもの教育を受ける権利がますます奪われようとしています。

■現地団体の対応

KCDは、コロナ対策としてまず地元自治体職員や村の子ども会(ピースクラブ)のメンバーたちと協力して、コロナの知識や感染予防の方法などを村々を回って伝える活動から始めました。また流通がストップしたため、安全な野菜を自給するために家庭菜園を作ることを奨励し、野菜の種子や苗を配布しました。現在、稚魚を配布する計画を検討しており、養殖した魚をタンパク源にしてもらおうとしています。 コロナの影響下にあって、子どもの教育に関する課題は多くあります。政府は休校を続けつつ、オンライン授業を続行しようとしています。プノンペンなどの都市では、家庭内での通信環境を整え、家族が付き添いながらの自宅学習は可能ですが、農村ではもともと教員の数や質が不足しているため、オンライン授業を満足いく形で受けられる生徒はなかなかいません。対策としてKCDが現在検討しているのが、ピースクラブのメンバーによる教育啓発ビデオの作製やインターネットを使った学びの拡大です。 ピースクラブの年長メンバーが年少メンバーに簡単なクメール語、英語、算数などを教える青空教室の活動は、子どもたちの集まりが「密」にならないように注意しながら、これまで同様に行われています。 今後、深刻な経済危機によって出稼ぎ者が増えることも予想されます。無理をして子どもたちを連れて家族で移住することがないよう、KCDでは有機農業の推進と生産物の商品開発、マーケッティングなどを進めていきます。

村人への衛生指導の様子

安全な野菜を自給自足するための家庭菜園の様子

小さな先生たちによる年少メンバーへの少人数制補習授業(青空教室)の様子